負け犬のオーボエ

負け犬です。料理、WEB小説、英会話、ときどき株など、Amazon.co.jpアソシエイト

山手線周回物語

皆さんはカバン無くしたことありますか。僕はあります。割と最近。

 

状況

ある日の夕方、新幹線で名古屋に行くため僕は品川駅にいた。余裕を持って事務所を出たら「エクスプレス予約」で予約しておいた時間より40分ほど早く駅についてしまったのだが電話しながら歩いてたところうっかり新幹線改札を通ってしまった。

改札(発券)してしまうともう乗車時間の変更はできないので、仕方なく喫煙所でタバコを吸ったりもう就業時間終わったからいいやと缶ビール買って飲んだりカツカレーについて考えたりお土産を買ったりしながらダラダラと時間を潰していた。

 

事件発生

そうこうしていたら割といい時間になったのでホームに降りて指定席を予約してる11号車の停車位置でスタンバイ。名古屋についたら宴会があるのでちょっと移動中に一眠りしよう、そういえば「蒸気でほっとアイマスク」はまだカバンに残ってたっけ?乗る前に確認しとくかと思ったのだが、はじめてその時自分がカバン (ビジネスリュック) を背負っていないことに気づいた。

 

一応補足すると僕は出張のために普段のカバンの中身を入れ替えるのが嫌なので着替えや化粧品の類はたとえ一泊でも別のボストンバッグ (日数が長い時はキャリーバッグ) に入れるようにしている。要するにこの日はカバンを二つ持ち歩いていたはずなのだが、新幹線乗車直前の僕は着替えなどを入れた割とどうでもいいボストンバッグだけを大事に抱えていたのである。

 

焦る

当然パニックである。ビジネスリュックは普段の会社用なので財布も会社のPCも、翌日の朝からプレゼンで使用する資料も全部そっちに入っている。焦って周りを見渡したが、リュックを下ろして置いた覚えもない。そうこうしていたら新幹線が来てしまったけどもちろん乗るわけにはいかない。

いったいいつから無いのか。会社を出る時は間違いなくあった。その後も山手線でカバンから充電器を出した記憶がある。というか改札構内に入ってから買い物とかもしてるのでこの近辺だろう。可能性が高いのはさっきまで結構な時間を潰していた改札階の喫煙所か (この間0.5秒) 発車する新幹線を横目に僕はエスカレーターを駆けあがる。

息を切らせて喫煙所まで戻ったけれど僕のカバンは見当たらない。置き引きという可能性だってあるが、このご時世で駅の片隅に置かれた「Fashion」と書かれている怪しいカバンを持っていく奴はたぶんいないだろう(残念ながら画像無くなりました。ダサいカバンは想像力で補完下さい)

 

一縷の望みをかけて新幹線改札横の窓口で駅員さんに聞く。すぐに調べてくれたがカバンの忘れ物など届いていないとのこと。もし出てきたら連絡をもらえるよう涙ながらにお願いして立ち去る。

 

試す

どうしようかと悩んでいたが、ここであることを閃いた。以前お気に入りの名刺入れをどこかに落として散々困ったのを教訓にGPSタグを購入したのだった。

 

 

あれを今こそ使うべきだろう。幸いにもスマホは手元に残っているので専用のアプリからアクセスする。ログインがめっちゃ面倒くさいけどおお、出た。屋内なのではっきりしないが品川駅を示している。やっぱり近くにあるのだ!!!アラームを鳴らす機能があるようなので即押すとサイレンに似た電子音が鳴り出した!僕の尻ポケットで!!!

 

気付く

アホである。もう変な笑いしか出なかった。

しかしこの一連の作業 (コント) は決して無駄ではない。尻にあった名刺入れには「EXICカード」が入っており、新幹線の改札はこいつで入場している。またタバコやビール、お土産はiPhone (モバイルスイカ)で購入した。つまり、そもそもカバンや財布が無くても新幹線改札内に入れて買い物までできるのだよ明智くん。まさにキャッシュレス時代の罠だ。気づくの遅いわ。

そしてついに思い出した。僕は山手線でビジネスリュックを網棚に置いて立っていたのだが、恵比寿で目の前の席が空いたので座り、スマホで『テクテクテクテク』を始めたのだ。没頭していたらいつのまにか品川に着いていたので慌てて降りたのだけどリュックを網棚から取った記憶など無い。あちゃー。

 

負け犬、動きます。

とりあえず事情を話して新幹線改札から出してもらう。在来線側の改札横にあったインフォメーションで落し物をした旨を伝えると「遺失物センター」が駅構内にあるのでそちらに行くように言われた。こうしている間にも優しい主人と逸れたファッショナブルなリュックは都内を彷徨っているのだろう。焦る気持ちを抑えながら指示された方向に向かって歩く。

窓口を探してかなりウロウロしたが見つからない。諦めてもう一度聞こうと思ったら、先程のインフォメーションの直ぐ近くにあるのを見つけた。なんか聞いた説明とはだいぶ違う気がするけどまあいいや。※一応記録として忘れ物センターの場所を残しておく。

f:id:yang-ats:20190308073443p:image

 

カンバセーションをエンジョイ

以下はようやくたどり着いた忘れ物センターでのやり取りである。 (会話形式で当時の雰囲気を楽しもう!)

 

僕: すみません、カバンを山手線に置き忘れてしまったようなんですが

忘: カバンね。何分くらい前?

僕: 50分くらい前ですかね

忘: 50分!?

僕: いやカバン無いことに気づかないまま一度新幹線改札まで行って、乗る前に気づいたんですよ

忘: (かわいそうなものを見る目) ちょっと調べてみます。どんなカバン?何時くらいにどこから何両目に乗った?

僕: (説明する) ※Fashionについては触れない

忘: (端末を叩いて) 今のところ届いてないね

僕: 網棚にあると思うんですが、これって回収されないですよねきっと

忘: 残ってたとしても、終電後だね。自分で探した方が早いよ

僕: えっ

忘: 50分前ならそろそろ乗ってた電車がぐるっと回って品川に帰ってくるから、だいたい降りたホーム場所覚えてるでしょ?乗り込んでそのあたりの車両見て、無ければ次の駅で降りて同じことの繰り返し。それが一番早いよ

僕: まじですか

忘: 悪いけど、環状線だから我々も出来ることが限られてるんだよね

僕: やってみます。あ、一応もしこちらで見つかれば連絡下さい (紙に書く)

 

東京を回るよ

というわけで僕はまた山手線のホームに降りたつこととなった。長い旅が始まる。

遺失物センターの助言に従い予想される少し前の電車に乗り込む。3両ほど探すが無い。田町で降りる。次の列車を待ってまた乗る。また3両ほど探すが無い。浜松町で降りる。また乗る。本当にこの作業は意味があるのか。もう僕のカバンはとっくに悪意ある誰かによって持ち去られてしまったのではないだろうか。

お金は自業自得だから仕方ないけどカード関係の停止面倒だな。悪用されたら嫌だしもう停止した方がいいだろうか。会社のPC無くしたら始末書だよな。今日の宴会はもうどうでもいいけど連絡しなきゃな。というか明日朝からの大事なプレゼンどうしよう。体調崩したことにでもしようか。

そんなことを考えながらさらに乗り継ぐこと2駅、有楽町でついに歴史が動いた。ホームに入ってくるE235系、その姿を見たときから何かを予感させるものがあった。ゆっくりと停止し、目の前のドアが開くその前から僕の目は網棚の上黒いリュックに釘付けになる。彼とは2ヶ月ほど前にアマゾンのタイムセールで出会ったばかりだけどその姿は間違えようもない。おかえり、僕のビジネスリュック。東京の旅は楽しかったかい?

 

再会、そして

そして電車のドアが静かに開く。何万歩よりも距離のある一歩を踏み出し人を掻き分けながら僕は彼のもとに駆け寄る。

そして、Fashionと書かれたリュックを掴み取った僕は再会に喜ぶ間も無くそのままUターンして電車を飛び降りた。

 

そのまま乗ってれば次は東京だが、僕は品川駅の新幹線改札を一度通っているので自由席に乗車するためまた品川に戻らなければならないのだ。当然、周りの人の目が痛い。誰かが何か言っている気もするが閉まるドアの音でかき消された。そりゃいきなり乗ってきて無言で網棚のカバンを掴んでダッシュで降りていく人間いたら怪しすぎるわ。僕なら泥棒か良くても何かの運び屋あたりを疑って、通報もしくはネタにするだろう。

 

お願い

ここまで3,000文字以上も綴ってきたけど、僕の体験を共有させられた皆さんはもしネットやSNSの片隅で怪しい小太りのオッサンが叩かれているのを見たらどうか弁護してほしい。ここに誘導するだけでいいです。まあそんなことないだろうけど。

 

というわけで品川駅にまた戻った僕は遺失物センターで見つかった報告とお礼を言い、新幹線改札で再入場して次に来た列車の自由席に乗り込んだ。

カバンに残っていた「蒸気でほっとアイマスク」を取り出してひとときの安らぎを得る。そういえばこいつを探そうとしなければそのまま予約した新幹線に乗ってしまいもっと大変なことになっていただろう。宴会にも30分程の遅刻ですみそうだし、明日の仕事にも支障はない。いまのところ当局が怪しい人間を捜査しているというニュースもない。何故かひと仕事終えた気になって、僕は名古屋へと向かう。

 

教訓

・テクテクテクテクは危険

・財布にもGPSタグ導入推奨

・忘れ物のカバンを取って降りる際は余計な誤解を防ぐため「わたくし○△株式会社の✳︎✳︎と申します!この度愚鈍なるわたくしはこの車両に愛用のカバンを置き忘れてしまい、長い旅の末いま再会したものであります。ご乗車の皆様、こちらのカバンはわたくしのものですので持って降りることをどうかご了承ください!」と言い残してから降りること (近くの人に名刺を握らせておけば完璧)

・蒸気でほっとアイマスクを使って熟睡すると新大阪まで起きないので忘れずにアラームをセット